Interview

胡虎あくびインタビュー|VRChatから広がる音楽の世界。「歌うことをやめない」その理由

胡虎あくびインタビュー|VRChatから広がる音楽の世界。「歌うことをやめない」その理由

歌うことに意義というか、意味が増えました

――音楽活動のペースは決めているんですか? 作曲やリリースの頻度など

決めてないです。私、めちゃくちゃスローペースなんですよ。自分のペースでしか行動できないですよね。歌詞もスローですし、メロディも思いついたときだけ進むみたいな。

――普段から、思いついたメロディを録音しているんですか?

そうですね。今も録音していますし、それが溜まったときに渾身の作曲ができる感じです。「うつるんです」以降はまだ自分で曲を書いていないですね。

ちなみにゼロから何もないところでやってみようかなと思って、途中で止まっているデモはいっぱいあります。曲の亡骸たちがパソコンの中で寝ています(笑)。

――作曲もできちゃうんですね

作曲もできると言うとおこがましいかもしれないですけど、鼻歌を清書して、コードを付ける感じです。ピアノが弾けるので、鼻歌のメロディを清書したものとコードを渡して、編曲してもらったのが「うつるんです」なんです。

――「うつるんです」は、愛が深い曲ですよね。表現上はそこまで愛という感じではないんですけど、よく聴いて歌詞を読むと、結構愛だなと思います

そうですね。ちなみに、これは最初に話した活動を始めたきっかけの、VRChatでうまくいかなかった経験からできた曲なんですよ。分かり合えないけど、生き物って愛おしいよね、みたいな感覚なんです。自分の生きている日常も、分からない他人のことも、分からないからこそ愛おしいというか。

日々なんとなく過ごしている時間とか、なんとなく喋っている人たちに対する愛が込められた曲だと思っているので、そういうふうに受け取っていただけているなら、伝わっていてとても嬉しいです。

――飽き性みたいなところを繋ぎ止めている大きなラインの一つが作詞なんでしょうか

そうですね。音楽活動を始めて、お話してくれる人や音楽をやっている友達が増えていく中で、よくみんなで言っているのが、「言葉で人に思いを正しく伝えられるのであれば、音楽ってやらなくていいよね」ということなんです。結構思想が強いことを言っていますけど(笑)。

私もよく喋るんですけど、伝えられないことがめちゃくちゃ多いんです。ニコニコしているので、怒らなさそうと言われることも多いんですけど、結構苛烈で感情的なタイプなんです。

お腹の中で煮凝りみたいになっているものが、音楽によって出せている感覚があります。歌うたび、ライブをするたびに、誰かを傷つけるわけでもなく外に出せる。それが伝わってくれる感触があるのが、続けられている大きなポイントかなと思います。

――音楽活動において今後チャレンジしたいことはありますか? ジャンル的にこれをやってみたいとか

今作っているEPもそうなんですけど、いろんなジャンルの中から好きなものをつまみ食いしていくというチャレンジをしています。これまでとは全然違う曲たちが出てくると思うので、そのチャレンジを見守っていてもらいたいです。

あとライブは、やっぱり生演奏で歌う機会をもっと増やしていきたいなと思っています。いろんな演奏者の方の力を借りて、ゴリゴリの音楽をバーンって投げつけていきたい気持ちがあります。

――あくびさんといったらVRChatのイメージも強いのですが、どういうところに魅力を感じていらっしゃいますか?

すごくぶっ込んで言うんですけど、ライブハウスに行けないお客さんでもライブを観られるところです。ライブハウスって、私たちは普通に行きますけど、怖いんです。私もどちらかというと、ライブハウスやDJイベントをやっている箱を全然怖がっていたタイプでした。

――なるほど

お作法がわからない感じですね。他の人のことが気になってしまうと、構えちゃうというか。好きな音楽がそこで鳴っていて、それに集中して存分に楽しめる人だったら怖くないんだろうなと思うんですけど、周りのことを気にしすぎてしまう人もいるじゃないですか。私も結構周りのことを気にするタイプなので。

案外、人が多いところに行くのが苦手な人にとって、ライブハウスは怖いんです。一歩目が怖いんですよ。

――「お作法がわからない」はすごくわかります。一回行ってしまえば大丈夫なんですけど、一回行くまでのハードルは結構高いですよね

私は今でも、大きいアリーナのライブに行くときでも、一人で行くのは結構苦手です。周りの人と楽しみ方が違ったらどうしようって思ってしまうので。

でもそういう人でも、ゲームができるくらいのパソコンがあれば、目の前でパフォーマンスを観られるんです。ゲームとして始めるハードルは高いかもしれないですし、「一体VRChatって何なんだ?」という感じのものではあると思うんですけど、入ってイベントにたどり着けさえすれば、いつもの安心できる家にいる状態で楽しめるのが一番いいなと思っています。

――音楽とVRChatのシナジーも聞きたいです。リアルのライブハウスに行きにくかった人が気軽に生演奏を観られるというのも一つだと思うんですけど、他にもありますか?

あくびをはじめ、バーチャルに生きているタレントの皆さんやVTuberさんって、バーチャルが主戦場なんですよ。リアルに姿を現すのって、VTuberにとっては結構大変じゃないですか。ライブイベントをやるとしても、演者とお客さんという距離感が、結構保たれた状態でしか出られないことが多いじゃないですか。

――そうですね

でもVRChatは、みんながバーチャルに来てくれるんです。要するに、私たちが暮らしているところに来てくれるわけですよ。だから、コミュニケーションがすごく取りやすいんです。目と目が合って、ちゃんと話せる。

音楽とのシナジーでいうと、やっぱり自由にできることですね。やろうと思えば、どんなことでもできる場所だと思います。本人の熱量や、本人がどれだけ手を動かすかが、結果に現れやすい場所だと思うので、そこにチャレンジできるのは大きいですね。

――確かに、それは大きいですよね

バンドキッズだと、地方のバンドシーンに行ったりすると思うんですけど、その場にいないとわからないものがあるじゃないですか。でもVRChatだったら、みんな全国バラバラなので、自分の好きな音楽を見つけやすいのかなと思います。

――もう少し広がってくれれば、もっとみんなが知るきっかけが増えて、一気に流行るだろうなとは思います

そうですね。一昨年くらいにスタンミさんのブームがあったり、今年は「超かぐや姫」で一度ブームが来たり、一定の導入はあるんです。ただ、大きなイベントのときに入るだけで、日常的に面白い場所にたどり着くまでが多分ハードルが高いんですよね。

そこは、私たち個人勢やVRChatで活動しているアーティストたちの頑張りどころだと思っています。「毎日新しい音楽を知れるじゃん」「好きな音楽を聴けるじゃん」ということが、もっと当たり前にいろんな人の目に触れる形でできたら、きっとみんな結構いてくれるんじゃないかなと思っていて。

――ご自身の今後の目標はありますか?

自分は、歌を歌うことをやめないことしか目標に置いていなくて。長く続けたいです。

――それは飽き性というところもあるんですか?

それもあるんですけど、3年やっている中で、うちのリスナーさんが本当にいい人たちばかりなんです。本当に大好きなリスナーさんたちしかいなくて。最初は本当に、飽きたらやめてもいいやくらいの心積もりでいたんです。でも、歌うことに意義というか、意味が増えました。

――守るべきものが生まれたんですね

そうですね。増えました。続けることって、何でも一番難しいと思っていて。だから絶対に、どんな形でも歌を歌い続けていくことはやめないよ、というのが公言している目標ですね。

――継続が目標になっているんですね

そうです。あとは、ワンマンをやりたいです。でも、まだまだ私には訴求力が足りないので、泥臭く営業していきたいですね。去年、RIONECTIONのおかげで3Dライブをやらせてもらったんですよ。あれがとんでもなく楽しくて。だから、3Dワンマンをどこかでやりたいというのが新しくできた目標です。